スポーツ鍼灸で腰痛ケアをしよう!

腰に対するスポーツ鍼灸

スポーツ鍼灸と腰痛はとても相性が良く、鍼灸治療だけでなくアスレティックリハビリテーションを組み合わせることでより効果的なコンディショニングとなりえます。どんな症状がスポーツ鍼灸の対象なのか、また具体的にはどんな治療をするのかなどをお伝えできればなと思います。腰痛の基礎知識も踏まえ説明しておりますので、参考にしていただければなと思います。

スポーツ鍼灸で注意するべき人体構造

スポーツ傷害は、スポーツ外傷とスポーツ障害に分けられます。

一般的に捻挫や打撲・骨折などの急性外傷のことを『スポーツ外傷』と呼び、慢性的な疲労の積み重ねや少しの痛みが積み重なり大きな症状になったものを『スポーツ障害』と呼びます。

腰椎・椎間板

椎間板ヘルニアの説明

腰椎は第1~第5腰椎まで存在し腰の安定性を担っている背骨の1種です。

第3頚椎より下の椎骨はほぼ同じ形状をしているが、下方になるほど椎骨にかかる負担が大きくなるので椎体も大きくなる。

また棘突起や横突起の大きさ、関節面の向きが異なっている。胸椎部は生理的に後彎を呈し、腰部は前彎、仙骨部では後彎を呈している。湾曲に移行部は負担が大きく、胸腰移行部の椎体骨折や下部腰椎での分離・すべり症や椎間板ヘルニアなどが起こりやすい。

靱帯・筋

背中の筋肉

靱帯は、椎体および椎間板の前には前縦靱帯、後ろには後縦靭帯がある。後縦靭帯は椎体後面の上下及び椎間板に付着している。椎体後面の中部には隙間があり、そこから血管や神経が椎体に出入りしている。後縦靭帯は脊柱の下方にいくほど狭くなっていて、腰部の椎間板の後方は広くは保護されておらず脆弱な状態なため、椎間板ヘルニアでの髄核の脱出は後側方に多発し、神経根の圧迫が起きやすい。

後縦靭帯の後ろには脊柱管があるが、脊柱管の外側および後方には黄色靱帯がある。肋骨突起の間には横突間靱帯、棘突起間には棘間靱帯が張っており、また棘突起の後端は第7頚椎から仙椎にかけて棘上靱帯が付着している。さらに第4・5腰椎の横突起と腸骨稜の後端および前面との間に腸腰靱帯が張っている。

スポーツ鍼灸で対応する腰の怪我

捻挫(腰椎捻挫、仙腸関節捻挫)、腰部椎間板ヘルニア、分離・すべり症について紹介。

腰椎捻挫

腰に痛み

椎骨同士は椎間関節と椎間板によって連結され、さらに靱帯によって補強されているため、脊柱が過度な運動を強制されると、靱帯や関節法などの軟部組織が損傷をきたし、さらに椎間関節や椎間板の損傷をきたす。

【症状】主な症状は、椎間関節部の痛みと反射性の疼痛、筋緊張および圧痛である。疼痛は主に運動時の痛みであり、前後屈や腰を捻る動作で増強する。椎間関節は脊柱後方にあるため後側屈時に負荷がかかり強い疼痛が発生する。しかし前屈時にも上位椎骨が前方に移動しようとするので椎間関節に負荷が加わり疼痛を訴えることも少なくない。

腰椎捻挫に対するスポーツ鍼灸 例

脊柱の傍側にある経穴やその周辺の筋肉に対して置鍼法を行い、疼痛の緩和や筋緊張な緩和を目的に行う。腰椎捻挫は急性の炎症症状が強い場合がほとんどのため、安静保持を基本とし市販または病院で処方された湿布薬や消炎鎮痛剤の投薬などが初期対応としては望ましい。

仙腸関節捻挫

骨盤の構造と名称

仙腸関節は、仙骨と腸骨が大きな関節面で連絡し、周囲は靱帯によって固定されている強固な関節です。可動性がほとんどないのが普通で、靱帯の変性による破壊、妊娠・分娩時のホルモンバラン分泌の影響による靱帯の弛緩などによって緩むと可動性を生じ、関節軟骨に負荷が加わることで変形性関節症を起こしやすくなる。

【症状】腰椎捻挫(椎間関節性腰痛)の場合と同様に、局所と臀部から大腿外側への放散痛を訴えることが多く、また関節局所の圧痛や筋硬結が発生する。

仙腸関節捻挫に対するスポーツ鍼灸 例

仙腸関節は仙骨と腸骨(骨盤の骨)との関節であるため、仙骨表面から腸骨に向けて関節付近への刺鍼が多くなる。スポーツ鍼灸の目的としては、疼痛の緩和、これが一番大事になる。腰椎捻挫での処置と同じく安静保持と消炎鎮痛薬は有効である。

腰椎椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアの説明

上下の椎体の間にあってクッションの役割をしているのが椎間板です。椎間板には体重の負荷がかかるので特に下位腰椎の椎間板にはとても大きな負荷が加わります。椎間板は髄核と繊維輪の弾力性によって変形できるので、椎間関節と共に脊柱の動きを担っている。そのため身体を曲げた際には椎間板の前後左右のいずれかの部分に圧縮が加わり反対側は伸ばされる。
正常では腰椎は前彎しているので、前屈みの姿勢になると椎間板の前方が過度に圧縮され、内圧が高くなることで後方に内部の髄核がヘルニアとして突出してくる。

【症状】一般的に腰痛と下肢症状が起きる。疼痛は初期には腰痛のことが多いが、後に下肢の痛みになりやすい。腰痛は、後方突出のヘルニアの場合前屈時に疼痛が酷くなるため前屈をし避ける。後屈時にも痛みは出ることがある。また神経根症状によって下肢に放散痛が生じることがある。

腰椎椎間板ヘルニアに対するスポーツ鍼灸 例

保存療法としては急性期には安静保持を基本として、下肢の反応点に鍼灸治療を行い可能であれば腰部の鍼灸治療も行う。疼痛や神経根症状が強い場合があるので、その場合は下肢のみ施術することも多い。下肢では、おしりの付け根と膝裏にある経穴とふくらはぎの経穴を組み合わせ、雀琢と言われる鍼灸治療の手技を用いて得気を出します。腰部の鍼灸性術では、脊柱の傍側の経穴を使い軟部組織などを緩め、椎間の圧を軽減させることで神経根症状の原因の部分に働きかけます。

脊椎分離症・すべり症

脊椎分離症・すべり症の画像

分離症やすべり症は、上下の関節突起が関節している部分が離断して疼痛が生じるもので、分離した椎体が前方に滑る状態を分離・すべり症という。まれに分離しているわけではないが前方に滑ることもあるため、医療機関での画像診断は必要である。

【症状】腰痛が主であるが、分離だけの場合は腰痛は軽度のことが多い。椎間症を伴って次第に腰痛が強くなる事もあるため注意が必要。腰痛の他、反射性の臀部や大腿外側の牽引痛が見られることがあり、また、分離・すべり症によって馬尾神経や神経根の圧迫起こると、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアと同様に下肢痛や神経症状と間欠性跛行を伴うことがある。

脊椎分離・すべり症のスポーツ鍼灸 例

腰椎椎間板ヘルニアのスポーツ鍼灸とほとんど同じだが、大きく違うことはコルセットの着用と急性期での温熱療法がおこなわれる点だと考えられます。腰痛症状が強い場合は、適切な処置を取り消炎鎮痛を目的に行うのが良いとされています。

温熱療法で、腰神経後枝を介した反射性の牽引痛の緩和と侵害されている組織の回復に努めます。場合によって、お灸の施術なども取り入れ臨機応変に鍼灸施術を行っていきますが、この場合はまず整形外科での診察をおススメします。

スポーツ鍼灸を始める前に

腰痛治療では、多くのケースで画像検査は必須ではないとされていますが、特定の症状に対して臨床的に適した検査方法があります。

  • X線検査 外傷性の骨折、疲労骨折、脊椎すべり症、構造上の腰部不安定性が疑われる場合
  • 骨シンチグラフィー 脊椎分離症が疑われる場合

その他、CTスキャンは一般的に神経根圧迫が疑われる場合に行われるが、顕著な神経学的徴候がない限り優先順位は低いと言われています。

スポーツ鍼灸や通常の腰痛治療を行っていくうえで、適切な評価や画像診断が必要になることがあります。長期的なパフォーマンスアップを目指してスポーツ鍼灸を選択する場合、一度整形外科で検査を行うことを強くおススメします。

スポーツ鍼灸で腰痛ケアをしよう!

スポーツ鍼灸と腰痛にはとても深い関係があり、プレーヤーの身体ケアとして有効な選択肢の一つであると言えます。疲労回復や疼痛の除去を始め、関節可動域の拡大などメリットは大きいと言えます。

セルフケアとして、ストレッチやセルフマッサージなどはよく行うと思います。それはスポーツ鍼灸をする場合でもとても大事なことで、スポーツ鍼灸を行っているからセルフケアは必要ない、ということではありません。

梅島鍼灸院では、プレーヤーが高強度のトレーニングや試合を繰り返すための身体を作り、ケガをしにくい環境を整える手助けを行えればと考えております。日頃行うべきケアや補強トレーニングについても助言は出来ますのでご相談ください!

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